最近見た映画の感想とか何か書かないと忘れちゃう気がするからブログを始めてみました。特に告知はしないので気が付いた人だけ読んでください。
「福田村事件」
ずっと見ようと思ってたんだけど面倒くさくて放置してたのをついに鑑賞、内容としてはまあまあ。前半はかなり良いと思ったんだけどクライマックスにかけてが何とも……。未亡人と船頭の恋愛とか朝鮮帰りの夫婦の距離感なんかは映画的だなあというか人間関係を盗み見ているような快感があって、俺はこういう下衆いものを見たくて映画を見てるなとか思った、もちろんそれだけじゃ無いけど。あとは村の会合のシーンも良かった、食事を運ぶ女性の尻を男がサッと撫でるカットがあってそういうさりげない演技に込められた批判精神みたいなものは見ていて楽しく感じた。本当に嫌な感じの男がたくさん出てきましたね、嫌な感じの人を見るのも好きです。
ただ前半見ていて楽しかった恋愛模様は後半になると失速というか、正確に言うなら何か肩透かしをくらったような終わり方をしててそれが不満だったかも。未亡人が船の上での浮気セックスを目撃するところなんかは単なる差別反差別みたいなお題目を超えたところにある憎しみみたいなものに繋がるんじゃないかとか思ったんだけど特にそういうことは無く……。恋人を朝鮮から帰ってきた女に寝取られて、その女がつけていた朝鮮の指輪をわざわざ豆腐に入れて返すのに、結局それは恋人に水ぶっかけただけで終わっていて個人的な憎しみと差別やそれに類する暴力が繋がる瞬間みたいなものは見れなかった。まあこれは俺が勝手にそうなるのかなって思ってただけなんだけど、でも普通に良い人として行商人を庇うのは何で?みたいに思った。自分もこの村に虐げられてたからとか?俺は正直ピンと来ず。
一番気になったのは謎に現代的な価値観をしっかり持った新聞記者の女で、こいつの言葉って何かリアリティがないような気がするというか、あまりにも素朴に差別とか言論統制みたいなものに反対しすぎじゃないかというか。まあ意外にこんなもので俺の偏見が邪魔をしてるだけなのかもしれないけれどこの記者が出てくるところはあんまり楽しめなかった。
何というかこの映画は良いやつと悪いやつがハッキリ分かれているような印象で、実際にあった事件を映画にして伝える以上の何かにはなってないと思った。こいつは良いやつだから虐殺が起こりそうな時は止めに入る、こいつは悪いやつだから殺しちゃう、みたいな感じで映画の後半は事件を見てるだけで映画を見てないような気がした。まあ画的に凄いものではあったと思うけど、Aはもっと凄かったような気がする。
思ったこととしてこの映画は誰が見るんだというか、日本人の村社会的な性質や差別について批判なんてこの映画をわざわざ見る人はある程度内面化されてるだろうから敢えて言う必要があるのかというかそんなことを思った。「福田村事件」を見る人がネトウヨな可能性は低そうだなというか、これは明らかに言いすぎだけど新聞記者の使い方なんかはリベラルポルノみたいな溜飲の下げ方をしてないか?みたいな、カスな右翼を現代倫理観で論破(敵が強大すぎて勝てないが美しい)みたいな恥ずかしさがどこかにあるのでは無いか……みたいなのは言い過ぎか、でもまあそんなことを少し思った。
そういう細かいところを抜きにすればこれぐらい良い映画って今の日本でも全然あるんだなって思えるぐらいの良さはあった、俺は最近の邦画に詳しくないからなんともだけど。
「泥の河」
この間野流のライブを見に行った後にドラムを叩いてた伏見さんが話題に挙げててそういえば見てなかったと思って鑑賞、良い映画ですね。主人公の家族の温かさに素朴な良さがあるというか、変な手品を延々とやってあげるお父さんとかよその家のお姉ちゃんと一緒にお風呂に入るお母さんとか、子供との触れあいの一つ一つに愛情みたいなのを感じた。
戦後を描く邦画がよく題材に挙げるものの一つとして”生活のために身体を売る女性”が間違いなくあると思うけど、それを子供の視点から見るのは新鮮な気分だったかも。赤線地帯に職業を理由に息子から絶縁される女性の話が出てきたけど、子供にとって親が生活のために客を取るっていうのはまあ辛いことというか人によっては恥ずかしいみたいな気持ちになったりするだろうなとは思う。
祭りから帰ってきてからの船の上での一連のシーンは凄く良かったですね、よその家に入っていくのは見たくないものをたくさん見ることになるなと思います。
ただまあこういう映画は俺の知識が追いついてない感じがして、まあなんかいい映画だったなぐらいのことしか思えないかも。
「近頃なぜかチャールストン」
これも伏見さんが名前を挙げてたから見た枠。名監督の手腕を見せられるというかすごく綺麗な映画だで、作中に散らばった要素が全部作品の内部に収まっているというか、何か綺麗な円を見ているような良さがある。冒頭のシーンからタイトルカットにかけてでもう心を捕まれる感じがあって、映像の歯切れの良さにいちいち唸らせられるような快感があった……。爺さんの一人が死ぬのをみんなで聖者の行進を踊りながら見送るシーンが最高、見ながらガッツポーズしたぐらい良かった。泥の河もそうだけど良い映画ってこっちの語る力が追いついてない感じがあって色々感想が書けない、面白かったです。
年越し前に見た映画の感想はだいたいこんな感じ。去年は全部で54本の映画を見てたらしい、ホロライブばっかり見てたからもっと少ないと思ってたけどまあまあですね。年越してから見た映画の感想はまた別の記事に書きます。おススメとかあったら教えてください。