最近見た映画、読んだ本、音楽⑩

      column

      更新頻度が下がるほど面倒になるのは目に見えていて、すでにそれなりに面倒なものになってもいるから月一での更新は守りたい。あんまり気が進まない中書いてますが、とりあえず映画の感想から。
      追記:コンピの連絡とか新しく増えたサポートの練習とかで忙しくて月一更新は全く守られなかった……。まあ仕方ない。

      映画の感想

      「ベストフレンド / 発情娘 糸ひき生下着」 監督:吉行由美
      女性監督のピンク映画を見ようと思って見た。監督は俳優もやってる人らしい。佐野和宏もそうだけど監督と俳優どっちもやる人はバイタリティありますね。最後三人が裸で絡み合ってる夢のシーンはなんか切なくて良かった。成人映画でクィアを題材にすること自体が先進的だったんだろうけど、今の感覚から見ると社会との関係が無視されすぎなのでは?みたいなことを思わなくもない。あと単純にこいつらのピュアにサブカル系の生き方してる感じが微妙に友達になりにくい。急いでBRUTUS片づけてるところとか。林由美香のぶりっ子みたいなキャラは可愛くて良かった。

      「海辺のポーリーヌ」 監督:エリック・ロメール
      別にそんなに見てるわけじゃないけれど、この監督が描くダメな中年(特に女性)を見るのは凄く好きだと思った。アンリの軽さに全然気が付かないでむしろ自分が優位に立ってると思い込んでるマリオンは見ててなんだか恥ずかしいし、アンリも小物っぽくてダサい。ひと夏の恋とかセックスよりもいい歳して恋愛してる大人の姿の方がよっぽど子供を大人にしそうだなとか思った。マリオンが何言っても現実から目を背けてるようにしか思えないけど、人が口に出したことはそのまま受け取ってやるのが良い行いなのでは。みんなが喧嘩してるシーンで原因のアンリが一番落ち着いてるのがなんか笑えてよかった。

      「囚われの女」 監督:シャンタル・アケルマン
      目黒シネマまで見に行った。多分二年ぶり。嫉妬深くてダメな束縛彼氏の話。ずっと勘ぐってるし自分から別れを切り出してその後やっぱ考え直そうとか言い出すのはダサすぎて笑えた。音楽がかなり良かった。あと死ぬほど眠かった。

      「私、君、彼、彼女」 監督:シャンタル・アケルマン
      何もない部屋でずっと砂糖食ってる時はどうしようかと思ったけど最後まで見たらなんか良かった。トラックの運転手が娘がエロくなってきたとかカスみたいなこと言って最後主人公に手コキさせるところが最高。もっと早く……とか、かなり笑えた。最後のレズセックスも良くて、白黒の画面に裸が二つもぞもぞしてる映像は迫力あった気がする。結構恥ずかしい恰好するのも良かった。囚われの女もそうだけどワンシーンが本当に長い。長回しが印象的みたいな意味じゃなくて、一つの動きをマジで時間かけて撮るなみたいなことを思った。人間の動きフェチみたいなところがあるのか。ジャンヌディエルマンも次やったら見に行きたい。

      「無能の人」 監督:竹中直人
      この間まで全部の部屋にドアが無くて、それの工事をしてる間家にいなきゃいけない日があってその時に見た。まあ想像通りユーモラスに描かれたダメ人間の話で、意外と真面目に石売ろうとしてるのが良かった。凄く好きかと言われると別に普通だけどそこそこ笑えてなんとなく面白い映画な気がする。GONTITIの音楽が良い。鳥男が神代辰巳らしい。ふーん。

      「ドライブ・マイ・カー」 監督:濱口竜介
      カッコ良い感じの女の人が出てきてこいつが河合由美か……と思ってたら違った。前半の奥さんの浮気を見るところも喘ぎ声が聞こえたとき絶対オナニーしてる!って思ったら違った。まあでも良かった気がする。色んな言語が飛び交う演劇もカッコ良かったし、車が滑らかに走る映像も見てて気持ち良かった。あと俳優の演技の巧拙って自然であることに限らないなというか、どれだけ多くの情報量を含んでるかみたいな側面もあるなあみたいなことを思った。主人公の喋り方とか芝居じみてて全然自然じゃないけど、あの喋り方に含まれる気分みたいなものがこの映画の魅力のように思った。ただ最後北海道行って思ってること全部言うシーンに感動できるかで少し分かれるような、俺はギリギリついていけなかった。ヤリチン君の「なので、結局……」はかなり笑えてこれも良かった。

      読んだ本

      バイトの休憩中ぐらいにしか読まないんだけど今月は色々読んだ。今回もほぼ小説。しかも結局平林たい子の自薦集は読まなかった。

      「伸子」 著者:宮本百合子
      外国で恋愛して日本帰ってきた二人の関係が微妙になってくのは浮雲みたいだなって思った。佃のひたすら主体性の無い感じは確かに腹立つ。まあなんでも相手を尊重しようとするのは普通に卑劣だよなとか思うし。謎に急に英語で会話したりベイビ……とか言うのはメロいというよりキモいと思ったけどこれは当時的にはアリだったのか気になる。離婚の話は当時としては先進的だったらしい、ふーん。くれないも離婚の話だし影響受けてたのかな。宮本百合子は興味ある気がするけどそんなに面白くないからあんまりたくさん読めない。これもそこそこ時間かかった。

      「伊豆の踊子」 著書:川端康成
      平林たい子が新感覚派の影響受けてるみたいなのを読んだから読んだ。正直少女の扱いに関して言おうと思えば処女厨乙みたいなことも言えるというか、あまりにも率直に男の考えた処女みたいな踊子に面食らうけど、文章の良さでするする読めてしまった。女の触った水は汚いでしょうとか引っ掛かっちゃうところはそれなりにあるけど。単純な話だけど文章に滲む虚無感は伝わるし、それが解けていくのにつられてこちらも何となく開放的な気持ちになる。最後の一幕は本当に良い。人に親切にするのも、親切を素直に受けるのも美しい心な気がする。そんなにわかるわけじゃないけどプロレタリア系の諸作家に比べて文章そのものに悦びがあるように感じるのは新感覚派らしさなのかな。

      「虹」 著者:川端康成
      これはそんなに印象に残らなかった、というか今思うと意外に暗い話だったなというか。銀子のピュアな感じとかはそれらしいし木村の手ごたえの無い感じも虚無感があって良かったと思うけど、いまいち入っていけなかった。もうちょい川端康成にハマったらもう一回ぐらい読んでみるかも。今ちょっとググったら面白そうなのが出てきたけど、まああんまり覚えてないのが本音。

      「雪国」 著者:川端康成
      マジで面白かった。半端ない。”今の舞踊界になんの役にも立ちそうでない本であることが、反って彼を安心させると言えば言える。自分の仕事によって自分を冷笑することは、甘ったれた楽しみなのだろう。そんなところから彼の哀れな夢幻の世界が生まれるのかもしれぬ。”って文章にかなりくらった。最近はなんの役にも立たない音楽を作る喜びみたいなことについてよく考えてたから、その三歩先ぐらいのことを急に言われて驚くみたいな衝撃だった。
      正直駒子の男の妄想みたいな女のふるまいは読んでてかなりギリギリというか、川端康成みんなそうな気がするけれど男を浄化させるための女過ぎる……みたいな乗れなさがあって、読みながらこれ楽しんで良いのか不安になるんだけど、言葉の面白さで読めちゃう。何よりそれまでに綴られた抒情性が強烈な幻想世界に飛躍する最終章が凄まじい。終わり方も超変だし、正直最後で何の話だったのか全くわからなくなったけど衝撃は大きかった。それなりに批評も多くされてるはずだからそういうのも読みたい。最近で一番面白かったものの一つ。

      「愛する人達(短編集)」 著者:川端康成
      川端康成はどんだけ少女が好きなんだみたいな気持ちにはなるけど良かった。「母の初恋」、「夜のさいころ」、「年の暮」がお気に入り。良いけど特段思うことなし。言葉が綺麗だから読んでて気分が良い。物語に出てくる処女過ぎる娘って気持ち悪がられるものの一つだと思うけど、まあそれに本気で執着してる人を笑うのは違う気がした。

      「山の音」 著者:川端康成
      かなり面白いのは間違いないとして、めちゃくちゃ小津っぽくないか?みたいなことを思った。小津映画はこんな風に父親が娘の美醜で態度変えたり息子が酷い不倫をしてたりはしないと思うんだけど。全体的なモチーフは近いように思った。それで気づいたけど二人とも同じぐらいの世代なんだなというか、この世代の戦後の捉え方って色々あるだろうけど川端康成と小津安二郎は共通する部分が多いのでは。晩春を見たのがだいぶ前だから正確なことは言えないけれど、原節子だって永遠の処女とか言われてるわけで菊子とかと重なる部分もあるような。もっとも菊子は息子の嫁で堕胎もするんだけど。まあかなり面白かった。死を想起させる山の音ってのもなんかカッコ良いような。

      音楽

      作曲に集中してたからあんまり聴かなかったような気がしてたけど振り返って見れば色々聴いた月だったかも。意外にライブもよく行った。

      COMPUMA – horizond 1

      スマーフ男組の人が今やってる名義らしい。ドラムの音がカッコ良い、アンビエントっぽいシンセも一生聴いてたい感じ。ボコーダーって普通にカッコ良く使えるんだなとか思った。なんも考えたくない時とかにだらっと流してた。

      Lives Of Angels – Imperial Motors

      Solid SpaceみたいなCold Waveみたいなやつを探してて見つけた、というか普通に関連にあったやつを適当に聴いたらかなり当たりでよく聴いた。リズムマシンにフィルターやらなんやらかけてシュワシュワした変な音のリズムの上に美メロの歌とギターが乗っかってマジで最高。曲が結構ダラダラしてて長いんだけど音のペラさと美メロのおかげで嫌味なくずっと聞いてられる。このバンドが参加してるCold Wave Of Colorっていう謎のコンピ(5~6枚出てる)に入ってる曲は全然違うしそんなに良くなくて残念。

      Oddults – Bill Wells,Maher Shalal Hash Baz

      上野で見たマヘルが凄く良かったからあんまり聴いてなかったアルバムを聴こうと思って友達に勧められたこのライブ盤をよく聴いた。参加してるBill Wellsの影響なのかわからないけれど、かなり綺麗にまとまってて、それがマヘルのもつ音の並びの美しさを素朴に際立たせていてそれが良かった。珍しく?聴き心地が良いというか、スッと聴けるみたいな。多分Gokってアルバムの曲をやるライブでスタジオ盤の方も良い。

      2025年6月1日 「SCREAMO RIOT」 高円寺TK4


      前の用事が押して途中から見た。一番見たかった煩悩バイブは見れず……。このイベントは巻きまくってたみたいでjakが始まる前ぐらいに着いたと思ったらなぜかもうライブをやっててアンコールまでやってた。ハードコア系のノリの中には巻きまくるのがカッコ良いって考え方があるんだろうけど、やりすぎだろ。耳栓して後ろの方で見たピーポーズは意外と(失礼)曲が良いことに気づいて良かった。Kiima Kariisのライブも久しぶりに見れてよかった。印象深いのは光分解とthat same street。前者は明らかに俺が好きな音楽なんだけど、この日の演奏は凄みがあった。インプロで魅せられる変なプログレ。that same streetは正直全然わかんなかったんだけどここまでわからないのは凄いからなんだろうとも思った。初音ミクが歌うオケを流して、それに合わせて叫んでるだけなんだけど、それをいざ目の前で見るとやはり意味不明というか、変な迫力のあるライブだった。
      会場で配ってたZINEは面白いページとそうでないページがあった。あんまり批判的なことは書きたくないけど主催のステートメントは結構ペラくて、「若者が知り合い、議論をし、影響し合えるような場所」とか「お金を稼ぐという資本主義の目的から切り離され、人と人として関われる場所」ってあるように、活気ある音楽シーンへの憧れから始めたイベントなんだろうけど、それならスクリーモ関係ないバンドを集めてSCREAMO RIOTと銘打つ理由がよくわからない。別の文脈のものを無理矢理自分の文脈に持ち込もうとしてるだけに見えた。さらに言うと音楽と対話(関わり、議論等さまざまに言い換えられる)を大きな主題にしてるけど、転換BGMの流れるライブイベントのどこで話せばいいんだとかも思った。喫煙所で駄弁るなんてどこのイベントでもやってる普通のことだろうし。
      まあこういう理想と現実のギャップからくる気の逸りみたいな言葉遣いは自分にも身に覚えがあるし、恥ずかしいと思うけど通過儀礼みたいなものなのかも。喧嘩売りたいとか全く思わないし普段ならこんなに色々言わないけれど批評を目的にしてるイベントのZINEだろうしこれぐらい書いても許してくれそう。単純にイベントのZINEを作るのは凄く良いと思うし、ZINE読むの好きだしこういうのはみんなもっとやってほしい。音楽については普通にエモで俺の興味の外側だった。あとZINEでラーメン二郎の話をしてるバンドは今すぐ考えを改めろ。

      2025年6月14日 「紅!!」 下北沢THREE

      中華戦争が久しぶりにライブをするということで見に行った。から探しとcatastrophe balletは何度も見てるし言うこと無し。演奏仕上がってるし曲も良くてカッコ良かった。中華戦争は最初の曲がかなり良かった。演奏は久しぶりのライブって感じがしたけれど、曲が良いから楽しかった。またやってほしい。

      2025年6月17日 「梅雨の仕事」 上野水上音楽堂

      良かった。色々思ったけどマヘルはリズムが全然偉くないのが良いと思った。裏打ちで刻み出したと思ったら素人なのかどんどんずれていく瞬間があって、それでも音楽は進行していくのに感動した。リズムが偉くないってのはロックバンドの逆というか、西洋のオーケストラに回帰するんじゃなくて一度ロックバンドを通過した後に音楽からリズムの権威を奪ってるのが面白かった。リズムがぐずぐずなことで生まれる浮遊感というか躓きみたいな演奏は、音楽の巧拙の外側にある美に触れさせてくれるような気がした。また次のライブも見に行きたい。

      以上。忙しすぎて全然更新できてなかった。あといつだかに大学の軽音サークルのライブも見たりしたけど特に言うことないし詳細を忘れたから割愛。七月に入ってからのものも全部割愛。最近サポートが増えたりソロ音源も作ったりしてて忙しいけどまあ充実なのかも。コンピは曲数多すぎて曲順決めが大変すぎる。まあなんとかします。

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